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〈「それこそ、ひどい仕事だよ。」〉
いつつめの星は、すごくふしぎなところだった。ほかのどれよりも、ちいさかった。ほんのぎりぎり、あかりと、あかりつけの入るばしょがあるだけだった。王子くんは、どうやってもわからなかった。空のこんなばしょで、星に家もないし、人もいないのに、あかりとあかりつけがいて、なんのためになるんだろうか。それでも、その子は、心のなかでこうおもった。
『このひとは、ばかばかしいかもしれない。でも、王さま、みえっぱり、しごとにんげんやのんだくれなんかよりは、ばかばかしくない。そうだとしても、このひとのやってることには、いみがある。あかりをつけるってことは、たとえるなら、星とか花とかが、ひとつあたらしくうまれるってこと。だから、あかりをけすのは、星とか花をおやすみさせるってこと。とってもすてきなおつとめ。すてきだから、ほんとうに、だれかのためになる。』
その子は星にちかづくと、あかりつけにうやうやしくあいさつをした。
「こんにちは。どうして、いま、あかりをけしたの?」
「しなさいっていわれてるから。」と、あかりつけはこたえた。「こんにちは。」
「しなさいって、なにを?」
「このあかりをけせって。こんばんは。」
と、そのひとは、またつけた。
「えっ、どうして、いま、またつけたの?」
「しなさいっていわれてるから。」と、あかりつけはこたえた。
「よくわかんない。」と王子くんはいった。
「わかんなくていいよ。」と、あかりつけはいった。「しなさいは、しなさいだ。こんにちは。」
と、あかりをけした。
それから、おでこを赤いチェックのハンカチでふいた。
「それこそ、ひどいしごとだよ。むかしは、ものがわかってた。あさけして、夜つける。ひるのあまったじかんをやすんで、夜のあまったじかんは、ねる……」
「じゃあ、そのころとは、べつのことをしなさいって?」
「おなじことをしなさいって。」と、あかりつけはいった。「それがほんっと、ひどい話なんだ! この星は年々、まわるのがどんどん早くなるのに、おなじことをしなさいって!」
「つまり?」
「つまり、いまでは、1ぷんでひとまわりするから、ぼくにはやすむひまが、すこしもありゃしない。1ぷんのあいだに、つけたりけしたり!」
「へんなの! きみんちじゃ、1日が1ぷんだなんて!」
「なにがへんだよ。」と、あかりつけがいった。「もう、ぼくらは1か月もいっしょにしゃべってるんだ。」
「1か月?」
「そう。30ぷん、30日! こんばんは。」
と、またあかりをつけた。
王子くんは、そのひとのことをじっと見た。しなさいっていわれたことを、こんなにもまじめにやる、このあかりつけのことが、すきになった。その子は、夕ぐれを見たいとき、じぶんからイスをうごかしていたことを、おもいだした。その子は、この友だちをたすけたかった。
「ねえ……やすみたいときに、やすめるコツ、知ってるよ……」
「いつだってやすみたいよ。」と、あかりつけはいった。
ひとっていうのは、まじめにやってても、なまけたいものなんだ。
王子くんは、ことばをつづけた。
「きみの星、ちいさいから、大またなら3ぽでひとまわりできるよね。ずっと日なたにいられるように、ゆっくりあるくだけでいいんだよ。やすみたくなったら、きみはあるく……すきなぶんだけ、おひるがずっとつづく。」
「そんなの、たいしてかわらないよ。」と、あかりつけはいった。「ぼくがずっとねがってるのは、ねむることなんだ。」
「こまったね。」と王子くんがいった。
「こまったね。」と、あかりつけもいった。「こんにちは。」
と、あかりをけした。
王子くんは、ずっととおくへたびをつづけながら、こんなふうにおもった。『あのひと、ほかのみんなから、ばかにされるだろうな。王さま、みえっぱり、のんだくれ、しごとにんげんから。でも、ぼくからしてみれば、たったひとり、あのひとだけは、へんだとおもわなかった。それっていうのも、もしかすると、あのひとが、じぶんじゃないことのために、あくせくしてたからかも。』
その子は、ざんねんそうにためいきをついて、さらにかんがえる。
『たったひとり、あのひとだけ、ぼくは友だちになれるとおもった。でも、あのひとの星は、ほんとにちいさすぎて、ふたりも入らない……』
ただ、王子くんとしては、そうとはおもいたくなかったんだけど、じつは、この星のことも、ざんねんにおもっていたんだ。だって、なんといっても、24じかんに1440回も夕ぐれが見られるっていう、めぐまれた星なんだから!
