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さて、王子くんが、さばくを、岩山を、雪の上をこえて、ながながとあゆんでいくと、ようやく1本の道に行きついた。そして道をゆけば、すんなりひとのいるところへたどりつく。

「こんにちは。」と、その子はいった。
そこは、バラの花がさきそろう庭にわだった。
「こんにちは。」と、バラがいっせいにこたえた。
王子くんは、たくさんのバラをながめた。みんな、その子の花にそっくりだった。
「きみたち、なんて名まえ?」と、王子くんはぽかんとしながら、きいた。
「わたしたち、バラっていうの。」と、バラがいっせいにこたえた。
「えっ!」って、王子くんはいって……
そのあと、じぶんがみじめにおもえてきた。その子の花は、うちゅうにじぶんとおなじ花なんてないって、その子にしゃべっていた。それがどうだろう、このひとつの庭だけでも、にたようなものがぜんぶで、5000ある!
その子はおもった。『あの子、こんなのを見たら、すねちゃうだろうな……きっと、とんでもないほど、えへんえへんってやって、かれたふりして、バカにされないようにするだろうし、そうしたら、ぼくは、手あてをするふりをしなくちゃいけなくなる。だって、しなけりゃあの子、ぼくへのあてつけで、ほんとにじぶんをからしちゃうよ……』
それからこうもかんがえた。『ひとつしかない花があるから、じぶんはぜいたくなんだとおもってた。でも、ほんとにあったのは、ありきたりのバラ。それと、ひざたけの火山みっつで、そのうちひとつは、たぶん、ずっときえたまま。これじゃあ、りっぱでえらいあるじにはなれない……』そうして、草むらにつっぷして、なみだをながした。

〈そうして、草むらにつっぷして、なみだをながした。〉
